TRAILER

第77回ヴェネツィア国際映画祭で審査員大賞など2冠を受賞しながらも、各国の映画祭で激しい賛否両論を巻き起こした本作。監督を務めたのは長編デビュー作から4作品連続でカンヌ国際映画祭に正式出品され、コンペティション部門での脚本賞を含む3冠に輝いてきたメキシコの俊英ミシェル・フランコ。ごく普通の人間の人生がふとしたきっかけで崩壊の危機に瀕していく様を冷徹な視線で描いてきた彼は言う。「我々の暮らすメキシコに限らず、世界は極限状態に追い込まれている。まるで日々ディストピアに近づいているようにね。そしてパンデミックによって事態が更に悪化したことで、期せずしてこの作品は時代に即したものになってしまったんだ」と。これは広がり続ける経済格差とそれがもたらす社会秩序の崩壊、今まさに我々が直面している危機的状況を描くディストピア・スリラーだ。目を背けたくなる、それでも刮目せねばならない“最悪”のリアリティに、観る者の覚悟が試される86分を体感せよ。

STORY

夢に見た結婚パーティー。マリアンにとって、その日は人生最良の一日になるはずだった。裕福な家庭に生まれ育った彼女を祝うため豪邸に集うのは、着飾った政財界の名士たち。一方、マリアン宅からほど近い通りでは、広がり続ける貧富の格差に対する抗議運動が、今まさに暴動と化していた。その勢いは爆発的に広がり、遂にはマリアンの家にも暴徒が押し寄せてくる。華やかな宴は一転、殺戮と略奪の地獄絵図が繰り広げられる。そして運良く難を逃れたマリアンを待ち受けていたのは、軍部による武力鎮圧と戒厳令だった。電話や通信網は遮断され、ついさっきまで存在していたはずの法と秩序は崩壊、日常が悪夢に変わる。だが、“最悪”はまだ始まったばかりだ。

CAST

ネイアン・ゴンザレス・ノルビンド

マリアン役

1992年メキシコシティ生まれ。映画・テレビ・演劇で数々の賞を受賞しているメキシコを代表する若手俳優であり、脚本家でもある。共同脚本を務めた『LEONA(原題)』(18)でモレリラ国際映画祭長編映画部門最優秀女優賞を受賞、メキシコ・アカデミー賞に当たるアリエル賞では女優賞・脚本賞の両部門でノミネートされた。メキシコ国内の作品だけでなく「GOTHAM/ゴッサム」(14-)などアメリカのTVシリーズや、ニューヨークのリンカーン・センター、パブリックシアターといった舞台でリチャード・ネルソンやグレッグ・ピアースらの作品に出演し、国際的に活躍の場を広げている。母は本作のミシェル・フランコ監督『或る終焉』などで知られる俳優のナイレア・ノルビンド。

ディエゴ・ボネータ

ダニエル役

1990年メキシコシティ生まれ。俳優・歌手。2005年にアルバム「Diego」で正式に歌手デビュー。トム・クルーズ主演のミュージカル映画『ロック・オブ・エイジズ』(12)への出演で国際的にもその名を知られるようになる。近年は『タイタン』(18)、『ターミネーター:ニューフェイト』(19)、『映画 モンスターハンター』(20)といった、いわゆるハリウッド大作からNetflixシリーズ「ルイス・ミゲル スターとして生きて」など多数の作品に出演する傍ら、本作ではエグゼクティブ・プロデューサーとして製作陣に名を連ねるなど、メキシコ映画界を牽引する国際的映画人として活動している。

モニカ・デル・カルメン

マルタ役

1982年メキシコのミアワトラン生まれ。Escuela Nacional de Teatral(国立演劇学校)を卒業しプロの女優となる。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した『バベル』(06)を始め、数多くの作品に出演。2010年にはカンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞した『うるう年の秘め事』に出演、自身初のアリエル賞(メキシコ・アカデミー賞)ノミネートを果たし主演女優賞を受賞、更に『ASFIXIA』(19)で同賞助演女優賞を受賞するなどメキシコを代表する演技派俳優として、2015年バンクーバー・ラテンアメリカ映画祭で審査員を務めるなどその名を知られている。

STAFF

ミシェル・フランコ|監督・脚本

1979年メキシコシティに生まれる。2012年『父の秘密』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを獲得後、2015年には『或る終焉』で同映画祭のコンペティション部門の最優秀脚本賞を受賞、更に2017年『母という名の女』では「ある視点」審査員賞を受賞したほか数多くの映画賞を獲得。ほとんどの作品で監督・脚本・製作を務めるなど、その強烈な作家精神で常にメキシコ映画界を牽引し世界の注目を集めてきた俊英。2015年のベルリン国際映画祭パノラマ部門で最優秀新人監督作品賞を受賞したガブリエル・リプスタイン監督の『600マイルズ』、同年ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したロレンソ・ビガス監督の『彼方から』などの製作も手掛けている。

「この映画は、地獄のようなメキシコの姿を描いているが、それは現実とそう変わらないものだ。社会的・経済的格差はどんどん広がり、不安定な状態が長く続いている。この国(メキシコ)そして世界が同じような状況に直面するのは、決して初めてのことではない。腐敗した政府は、声を上げる市民たちをいつだって暴力でねじ伏せてきた。この映画は“警告”だ。市民の不平等を民主的手段で解決しようとせず、その声をただ封じ込めるだけならば、更なる混沌を招くことになる、というね。」