TRAILER

監督は、タランティーノも絶賛したヴァイオレンス・アクション・スリラー『気狂いピエロの決闘』でヴェネツィア国際映画祭の監督賞・脚本賞を受賞するなど、スペインひいてはヨーロッパ映画界を代表する鬼才として知られるアレックス・デ・ラ・イグレシア。彼の下に、スパニッシュホラーの傑作『REC/レック』シリーズの撮影監督を務めた俊英パブロ・ロッソや、スペイン版アカデミー賞とも称されるゴヤ賞のノミネート常連で、『白鯨との闘い』などのハリウッド大作も手掛けてきたロケ・バニョスら一流スタッフが集結。

イタリアの“ジャーロ映画”へのオマージュを散りばめながらも、近年世界各国で社会問題化している「オーバーツーリズム」を起点に巻き起こる狂気の連続殺人鬼との対決を、スタイリッシュな映像とエクストリームなストーリーテリングで、超一級のエンタテインメントに仕立て上げている。

STORY

結婚を間近に控えたスペイン人のイサと友人たちは、独身最後に羽目を外そうと、カーニバルで賑わうイタリア・ヴェネツィアを訪れる。しかし、到着した彼女たちを待ち受けていたのは「観光客は帰れ」というプラカードを掲げた大勢の人々。近年ヴェネツィアでは、観光客の増加による環境悪化が社会問題になっていたのだ。それでも気を取り直して観光を楽しもうとするイサたちが乗り込んだボートに、突然カーニバルの衣装を着た奇妙な道化師が同乗してくる。彼女たちはその不気味な雰囲気さえも楽しもうとするのだが、道化師は観光客を次々と殺害する狂気の殺人鬼だった。浮かれたイサの仲間たちは、殺人鬼の標的となり一人また一人と姿を消してゆく……。

STAFF

監督・脚本|アレックス・デ・ラ・イグレシア

1965年12月4日、スペイン出身。『ペイン・アンド・グローリー』(19)などで知られるペドロ・アルモドバル監督のプロデュースによって、『ハイル・ミュタンテ!/電撃XX作戦』(93)で長編映画デビュー。同作はゴヤ賞新人監督賞ノミネートのほか、特殊効果賞ほか3冠を達成し、当時もっとも有望な監督として観客と批評家の両方から大きな賞賛を浴びた。1995年、『ビースト 獣の日』は監督賞を含む6つのゴヤ賞を受賞し、シッチェス・カタロニア国際映画祭やブリュッセル国際ファンタスティック映画祭など世界のジャンル系映画祭を席巻。その後も、ヴァイオレンス・アクション・スリラー『気狂いピエロの決闘』(10)がクエンティン・タランティーノに絶賛されヴェネツィア国際映画祭の監督賞・脚本賞を受賞、『スガラムルディの魔女』(13)はゴヤ賞を8部門受賞するなど、ヨーロッパ映画界の第一線を走り続けている。その他の監督作品に『どつかれてアンダルシア(仮)』(99)、『みんなのしあわせ』(00)、『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』(02)、『オックスフォード連続殺人』(08)、『刺さった男』(12)、『クローズド・バル 街角の狙撃手と8人の標的』(17)など。

DIRCTOR‘S NOTE

『べネシアフレニア』は、一見すると若い5人が何者かに追われながら、お化け屋敷のような暗い路地を逃げ回るホラー&スリラー映画だ。撮影された場所の雰囲気や映画のシチュエーションは、伝統的なホラー映画を思い起こさせ、所謂スラッシャー映画で見られるものが、本作でも確りと見られると思う。

しかし、本作は単なるスラッシャー映画ではない。人々が気づいていない“現象”に注意を向けさせようとする必死の試みなのだ。この物語の主人公たちが、自分たちが理解できない世界に迷い込み、危険にさらされていることに気づいていないように、私たちは皆、“オーバーツーリズム”の目撃者だが、誰もそれを自分たちに関係することとして受け止めていない。オーバーツーリズムがヴェネツィアに与えているダメージが非常に大きいにも関わらずだ。

問題は、誰も自分を加害者だとは思っていないことだ。観光客が渡航に使う巨大なプロペラを持つクルーザー船は、水位に深刻な影響を与え、ヴェネツィアの街を支える杭を破壊している。社会的にも環境的にも、壊滅的な影響を及ぼしている。ヴェネツィアの市民は少しずつ自分たちの土地から追い出されているのだ。

本作は、ヴェネツィアの住人たちがそんな観光客による町の破壊を見ていられず、大胆な行動を起こすという状況や設定を想定している。この映画を通して、私たちは、憂慮すべき現象が現実に起こるのを防ぎたいのだ。